研究室紹介

分析化学で探る太陽系の成り立ちと生命の起源

2022/01/07

癸生川 陽子 (けぶかわ ようこ)
横浜国立大学大学院 工学研究院准教授
【経歴】

栃木県宇都宮市出身。
東京工業大学 理工学研究科 地球惑星科学専攻 修士課程、
大阪大学 理学研究科 宇宙地球科学専攻 博士課程を修了、博士(理学)。
米国カーネギー研究所、北海道大学でのポスドクを経て
2014年より横浜国立大学 大学院工学研究院 機能の創生部門 准教授に着任。現在に至る。
2015年日本地球化学会奨励賞
2015年度日本惑星科学会最優秀研究者賞
令和3年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 若手科学者賞受賞。

研究内容

分析化学をベースとした実験的研究

 生命の惑星である地球は,宇宙空間の塵が集まって太陽系が形成されると共に約46億年前に誕生し,約38億年前には最初の生命が生まれていたと考えられている。小惑星を起源とする隕石からはアミノ酸を含め多様な有機物が検出されており,太陽系の天体や太陽系のもととなる星間分子雲などからも様々な有機分子が検出されている。このように,宇宙には生命の原材料になるような有機物が多く存在しており,これらの一部が隕石や惑星間塵として原始地球にもたらされた可能性がある。

アストロバイオロジーを推進

 当研究室では,このような宇宙の有機物がどこでどのように形成・進化を遂げたのか,また,地球の生命起源やさらには地球以外の天体での生命の存在の可能性を探るため,分析化学をベースとした実験的研究を行っている。特に,星間や太陽系小天体の環境を模擬した実験や隕石など地球外物質の分析に力を入れている。例えば,隕石母天体である小惑星は重要な有機物形成の場である。小惑星に含まれていた氷が融けることで熱水が生じたことが知られており,このような過程においてどのような有機物が形成されたのかを模擬実験により調べている。また,隕石に最も多く含まれているのが,不溶性有機物と呼ばれる複雑な高分子有機物である。これらは小惑星で受けた熱水過程などを反映して様々な分子構造に進化したと考えられている。赤外分光法,軟X線分光法,質量分析法などを用いて,これらの有機物がどのように形成され,進化したのかを調べている。

さらに,はやぶさ2プロジェクト(写真1)や国際宇宙ステーションを用いた宇宙実験(写真2)にも参加しており,多角的な観点から宇宙における生命の起源・進化・分布・未来に関する学問分野であるアストロバイオロジーを推進している。

写真1:はやぶさ2サンプル分析中

写真2:宇宙実験「たんぽぽ2」の帰還サンプル受け渡し

研究室学生の就職先(過去実績)

大阪教育大学・有人宇宙システム・日本電気航空宇宙システム・海洋研究開発機構・公務員・キリンホールディングス・トヨタ自動車・パナソニック・日清食品ホールディングス・第一三共・京セラ・日本パーカライジング・三菱電機・NTTデータフロンティア・セラピア・アビームコンサルティング・大塚商会など

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