【自動車業界】業界動向から各社の特徴まで徹底解説!
はじめに
自動車業界は、日本でも長年得意としてきた分野で、理系学生の方の就職先としても多くの割合を占めています。
グローバルで見ても大きな変革の時期を迎えている「自動車業界」ですが、就職先としてはどうなのでしょうか。
今回は自動車業界に関して、業界の将来から各社の研究まで、徹底解説していきます。
自動車業界を取り巻く環境
自動車業界の将来性
自動車業界を語る上でまず考慮に入れなければならないのが、SDGsを始めとした環境問題についてです。
自動車の排気ガスには、二酸化炭素や一酸化炭素などの有害物質が含まれていて、これらは大気汚染や地球温暖化の原因の一つとされています。
このため、例えばEUでは2035年以降の新車販売はゼロエミッション車(走行時の排出ガスを出さない車)のみという規制が提案されているほどです。
米国や中国など世界中でも規制が強化されてきていて、今後時代がSDGs達成のために大きく進んでいく中で、自動車業界には変革が求められていると言えます。
また、世界全体でのガソリン車やディーゼル車の保有台数は2038年にピークを迎えるという研究もあります。
環境問題に対する規制等を受けて、今後はますますEVのようなゼロエミッション車の割合が大きくなっていくと考えられます。
メーカー別世界販売台数(2021年度)
こちらの図は、日本の主要自動車メーカーの世界販売台数を示したものです。
これを見るとトヨタが2位のホンダと2倍以上の差をつけていることが分かります。
ですが、もちろんトヨタ以外の各社もそれぞれの強みを活かした戦略で利益をあげています。
ターゲットにしている地域や層にも違いがあるため、販売台数のみで一概に比較することはできません。
それぞれのメーカーについては後ほど解説します。
自動車業界の構造
一口に自動車業界と言っても、様々な会社が密接に関連しあって成り立っています。
以下の図は消費者までのサプライチェーンの大まかな構造を示しています。
私達のような消費者が自動車を買うときは「ディーラー」と呼ばれる販売会社を通して購入するのが一般的です。
また、自動車はトヨタやホンダのような自動車メーカーだけで作るわけではなく、多くの部品メーカーや素材メーカーがモノづくりに携わっています。
上図中の「メーカー」を分解すると、自動車づくりにおいてのピラミッド構造は以下の図のようになっています。
自動車業界を取り巻く環境
日本には自動車メーカーが8社存在していて、そのどれもがCMなどでも馴染みのある企業ばかりだと思います。8社それぞれについて概要を解説していきます。
トヨタ自動車
国内では最大手で、世界でも一位二位を争う企業です。
日本の企業の時価総額もトップで従業員数は連結で36万人を超える(2021年3月末)ほどの大企業です。
日本ではもちろん、米国をはじめ世界中に輸出・販売しています。
「トヨタ生産方式」というトヨタが生み出した生産方式は、日本だけでなく、世界の様々なメーカーにも採用されるなど、非常に有名です。
また、コネクテッド、MaaS事業の強化のために通信キャリアとの協業もしています。
トヨタの代表車種としてはプリウス、アルファード、ヤリス、カローラ、カムリなどがあります。
本田技研工業
ホンダも言わずとしれた大企業で、連結での従業員数は21万人以上います。
自動車はもちろん、二輪や航空機関連の事業も大きく、多角的な事業展開をしていることが特徴です。
海外へは米国を中心にアジアや欧州にも幅広く輸出しています。
また、電動化、自動運転、エンタテイメントの強化のためにソニーとの協業もしています。
ホンダの代表車種としてはN-BOX、フリード、フィット、シビック、アコードなどがあります。
日産自動車
日産は「ルノー・日産・三菱自動車アライアンス」というアライアンス(業務提携)を結んでいて、国際的にも競争力を持っています。中国・米国をはじめとして海外でも人気があります。
また、「技術の日産」と言われるほどの高い技術を有していることも特徴と言えます。
日産の代表車種としてはノート、セレナ、スカイラインなどがあります。
スズキ
スズキは静岡県に本社を構える企業で、主に小型自動車に強みを持っています。
中期経営計画では「小・少・軽・短・美」による価値ある製品やサービスの提供を目指すとあることからもスズキの強みがうかがえます。
また、スズキはインドなどアジアでの販売台数が非常に多い会社です。
スズキの代表車種としてはスペーシア、ソリオ、ハスラーなどがあります。
マツダ
広島県に本社を構える企業です。
「走る歓び」と「優れた環境・安全性能」を重視していて、デザインにも力を入れています。
北米を中心に海外でも多く販売をしています。
マツダの代表車種としてはマツダ CX-5、マツダ MAZDA2、マツダCX-3などがあります。
三菱自動車工業
三菱自動車は、ルノー・日産・三菱自動車アライアンスを提携していますが、実際に三菱自動車の筆頭株主は日産自動車で約34%の株式を保有しています。
突出して売れている地域があるというわけではなく国内・北米・欧州・アジア・豪州など様々な地域で一定数の販売があります。
三菱自動車の代表車種としては三菱 デリカD:5、三菱 アウトランダーPHEV、三菱 eKワゴンなどがあります。
ダイハツ工業
ダイハツはトヨタ自動車の完全子会社で、トヨタとの協業も多くなっています。
主にスモールカーを強みとしていて、中長期経営シナリオでもダイハツブランドの位置づけとしてスモールカー市場での活躍を考えています。
また、国内のみならずインドネシア・マレーシアなどでも事業を展開しています。
ダイハツの代表車種としてはタント、ムーヴ、ミラなどがあります。
SUBARU
スバルは他企業とは異なり、国内でのシェアは低いですが、北米での売上が高いです。
販売のうち約80%がSUV(スポーツ用多目的車)で、車種展開も10種類と非常に的を絞っていることが分かります。
スバルの代表車種としては、スバル フォレスター、スバル レヴォーグ、スバル XVなどがあります。
日本の自動車業界(自動車部品)
自動車1台を完成させるためには約3万個の部品が必要だと言われています。
これだけ多くの部品が使われているため、一社で全て一から作り上げるよりも部品ごとに専門を分けて特化して分担することで、効率的に生産できるようになります。
よく聞く「デンソー」や「アイシン」のような大手はほんの一部で、実際には数多くの中小企業が関わっていて裾野の広い業界です。
トヨタやホンダのような自動車の完成に携わるメーカーは「完成車メーカー」と呼ばれることがあります。
これら完成車メーカーに直接部品を納品するメーカーを「Tier1」(ティアワン。Tierは「段階、層」という意味)と呼び、Tier1に納品するメーカーがTier2、Tier2に納品するメーカーがTier3と続いていきます。
また、自動車部品メーカーは完成車メーカーの系列である場合が多いことも大きな特徴です。
トヨタ系、日産系、ホンダ系などがあり、業界一位のデンソーもトヨタ系の企業になっています。
ただ、完全に系列の完成車メーカーの部品のみを作っているわけではなく、他メーカーに販売したり海外に輸出することもあります。
ここではトヨタ系の大手三社のみピックアップして概要を解説していきます。
デンソー
国内の自動車部品業界一位の企業でグローバル規模でも非常に有名な企業です。
事業ポートフォリオは以下のようになっています。
(デンソー『会社案内』より引用)
割合が一番大きい「サーマルシステム」とは、エアコンシステムや熱マネジメントシステム等を指しています。
後述するアイシンや豊田自動織機と比べるとバランスが良いのが特徴とも言えます。
アイシン
「アイシン」は2021年の4月にアイシン精機とアイシン・エィ・ダブリュが経営統合してできた会社で、自動車業界の変革期を乗り越えるために再スタートが切られました。
アイシンの事業ポートフォリオは以下のようになっています。
(アイシン『会社案内2022』より引用)
パワートレインの分野は、アイシンHPによると「電動化車両の普及や燃費・エンジン性能の向上、排ガスのクリーン化に貢献する先進的な製品・技術開発」に関連しているということです。
売上の半分以上がパワートレイン分野に関連しているということで、アイシンの強みが分かります。
豊田自動織機
豊田自動織機は様々な事業を行っていて、フォークリフト、カーエアコン用コンプレッサー、エアジェット織機の3つでは世界シェアNo.1を誇っています。
(豊田自動織機『会社案内 2022』より引用)
産業車両とは工場や倉庫などで荷役運搬を行う車両のことです。
フォークリフトの国内販売台数はなんと56年連続No.1と圧倒的であることが分かります。
自動車分野でも幅広い事業を展開しています。
押さえておきたいポイント
CASE
CASE(ケース)とは、Connected(コネクテッド化)、Autonomous(自動化)、Shared & Service(シェアリング化)、Electric(電動化)の頭文字を取ったもので、今後の自動車業界の未来を示しています。
もともとはベンツが提唱した概念で、CASEは今の自動車業界をひっくり返してしまうほどの大きな力を持っているといいます。
Connected(コネクテッド化)は、車がインターネットとつながり、データの連携が進むことで様々なサービスが可能になることです。
交通情報の通知や、事故発生時の自動通報システムなどはすでに実用化されています。
Autonomous(自動化)は、自動運転のことです。
自動運転にも運転者を支援するのみにとどまるレベル1から、完全にすべてを車が代替して運転するレベル5までの5段階に分けられています。
Shared & Service(シェアリング化)とは、車のシェアリング化で、購入して所有するモノだった車がシェアして使うものに変わっていくという意味です。
日本ではいわゆる「白タク」のようなライドシェアは禁止されていますが、海外では急速に広まっています。
Electric(電動化)は文字通り自動車の電動化のことです。
自動車によって引き起こされる環境問題に配慮して、環境にやさしい電気自動車への転換が進んでいます。
コレに対応してトヨタは2030年までに30車種のバッテリーEVを展開することを宣言するなど、各社でも電動化の競争が始まっています。
MaaS
Maas(マース)とはMobility as a Serviceの略で、一人ひとりのニーズに合わせて複数の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービスです。
現在、日本では電車やバスを組み合わせた移動ルートの検索は一つのアプリで行うことが可能になっていますが、これもMaaSの一種と言えます。
さらに高度なMaaSの実現には、検索から予約・決済を一度に行えるようにする必要があります。
MaaSによるメリットは非常に多くあります。
電車が動かなくても代替経路をすぐに利用することが可能になったり、駅から離れていても自宅の前に自動運転車を呼んで駅まで行くことが可能になったります。
地方の過疎化や少子高齢化が進む日本では特に今後重要になってくる技術とも言えます。
最後に
ここまで自動車業界について解説してきました。
毎年、多くの理系学生の方が就職先として選んでいる自動車業界ですが、その構造や現状について理解できましたでしょうか。
100年に一度と言われる大変革の時期ですが、どの会社も強みを活かした企業努力を積み重ねています。
ぜひ各社のホームページやIR情報を読み込んで、興味がある企業の研究をしてみてください。
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2022/08/10