研究室紹介

ソフトマター物理学〜日常の現象をきちんと理解する〜

2022/01/07

栗田 玲(くりた れい)
東京都立大学 理学部物理学科 教授
【経歴】
2002年 東京大学工学部応用物理学科 卒業
2004年 東京大学大学院工学系研究科
     物理工学専攻修士課程修了
2007年 東京大学大学院工学系研究科
     物理工学専攻博士課程修了
【研究歴】
2007年 東京大学生産技術研究所 学術支援研究員
2007年 日本学術振興会海外特別研究員(エモリー大学)
2009年 東京大学生産技術研究所 特任研究員
2010年 東京大学生産技術研究所 特任助教
2013年 首都大学東京(現:東京都立大学)
     理学部物理学科 准教授
2020年 東京都立大学理学部物理学科 教授
専門はソフトマター、非平衡現象、泡沫や粉体、対流など身近な現象を扱っている。

研究内容

日常の現象って理解されていなの!?

 多くの人は洗剤を泡立てて食器を洗いますよね。泡はかるく触るだけで、すぐに壊れて無くなります。乾いた砂に水を含ませて固くして砂山を作る、という遊びも小さな頃きっとやったことでしょう。
 このちょっとした変化で大きな応答を示す現象をソフトマターと言います。このような現象はほとんどの人が知っていることだと思います。でも、「知っている」(経験則)と「理解している」(法則)は別物で、制御して応用するためには理解は不可欠です。意外と多くのことが理解されていないのです。

泡はどう壊れる?

 我々の研究室では、学生一人につき一つのテーマで行っているため、泡沫や粉体、膜、対流、蒸発、結晶化、相分離など多くの現象を扱っています。ここでは、ほんの一部を紹介したいと思います。
 気泡が集まって出来ている泡沫は、飲料、化粧品、消火剤、洗剤といった日常から生物が乾燥から身を守るために泡沫を使っているケースまで、様々な場面で見ることが出来ます。先ほど書いたように、ほとんどの人が「泡沫は壊れる」ということは知っているのですが、「どう壊れる?」についてわかっていませんでした。
 我々は、高速度カメラを使って、泡沫が壊れて行く様子を逐一観察しました。一つの気泡が崩壊する時、気泡間にある液膜から液滴が形成され、それが勢いよく飛び出し、他の液膜も突き破っていく、ということを発見し、さらにその理由について明らかにしました。泡が割れると液体が周囲に飛び散っているのを見たことがある人も多いと思いますが、これも液滴の放出が原因です。

基礎研究が紡いでいく未来

 さて、泡がどう壊れるのか、がわかると,どういう応用に繋がるのか?基礎研究はどのように日常に関わるのか?という疑問があると思います。僕も大学生の時に思ったことがあります。その時、先輩から「基礎研究は20年30年先の応用の土台になっている。もちろん基礎研究がすべて応用につながるわけではないけど、今の最先端の技術もいろんな基礎研究の組み合わせで出来ている。大学はすぐに応用につながらない研究をしていい所」と教えられ、僕の土台になっています。日常生活ではいろんなソフトマターが複雑に絡み合っているので、ソフトマターを理解することはきっと20年30年先の日常を劇的に良くする、と思って研究しています。

 

研究室学生の就職先(過去実績)

アルバック・クライオ株式会社, 沖電線株式会社, 株式会社 小笠原計器製作所, 株式会社クリーク・アンド・リバー社, JFEテクノリサーチ株式会社, 東京消防庁, アクセンチュア株式会社, 富士ゼロックスアドバンストテクノロジー株式会社, TIS株式会社, 気象庁, 株式会社太陽, 岡本工業株式会社, 野村総合研究所 他

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