研究室紹介

大学生のコミュニケーション能力の熟達化過程の解明

2022/01/07

中野 美香(なかの みか)
福岡工業大学
教養力育成センター 准教授

【経歴】

2007年3月 九州大学大学院比較社会文化学府国際社会文化専攻博士後期課程 修了
2009年4月 福岡工業大学工学部電気工学科 助教(2013.3迄)
2010年10月 カリフォルニア州立大学イーストベイ校 客員教員(2010.11迄)
2021年4月 福岡工業大学教養力育成センター 准教授 異動(配置換え)
専門分野は議論教育・コミュニケーション教育。
本研究室では,知の基盤となる認知・言語・思考・行動を対象に以下の研究を行っている。
(1)大学生・大学院生(18から30才くらいまでの時期)の能力・スキルの熟達化
(2)他者との相互作用による思考過程の影響
(3)学習が最適化される学習環境づくり
(4)上記の教育に関するプログラム・カリキュラム開発

研究内容

1. 工学分野からスタートしたコミュニケーション教育手法の開発

日本経団連が実施している社員採用に関するアンケートによると,選考時に重視する項目の1位は16年連続でコミュニケーション能力となっています。福岡工業大学電気工学科では全国に先駆けて,2007年度入学生からの新カリキュラムでコミュニケーション科目を開講しました。その後,2012年度からは就業力育成のための1年次必修科目として全学部学科で展開し,毎年100%近い就職率に貢献しています。講義では,前期はキャリア教育の枠組みで自己・他者・社会の理解を深め,後期は議論の実践を通して高度な言語・思考の技術を獲得します。段階的な学習とクラスメートとの交流は,就職活動のみならず生涯にわたる人格形成の礎になると考えています。

2.コミュニケーションにおける「越境の土俵」の発見

これまでの実践・研究から,大学生のコミュニケーション能力は3つの段階を経て上達することが明らかになりました。1つ目は,自分の考えに気付く段階です。2つ目は,異なる他者の考えを理解する段階です。3つ目は,自己と他者の違いを乗り越え,その間に「越境の土俵」を発見する段階です。「越境の土俵」とは,意見の対立や衝突を乗り越えた自己・他者・世界観の広がりが可能となる場です。いくら話す力を磨いたとしても,「越境の土俵」の発見なくして相互理解を深めることは難しいです。「越境の土俵」の発見には,数多くのテーマに関して自分の考えを明らかにし,他者の意見を聞いて共通点・相違点を分析し,多様性に開かれるような議論経験の積み重ねが不可欠です。

図「越境の土俵」(中野 2014)

3.共生・共創によるイノベーション

大学で出会う他者は比較的自分と近い属性ですが,卒業後は異なる世代や異なるバックグランドを持つ他者と協働することになります。共生・共創する今の社会に生きる個人として,仕事場面・日常生活を問わずコミュニケーションを通した「越境の土俵」発見の重要性は増しています。DXが浸透する中で,遠隔/対面,国内/国外を問わずコミュニケーションの場を創出し,イノベーションに貢献できる人材は今後さらに求められていくでしょう。時代や学生のニーズに合わせて,AIや教育データを活用したコミュニケーション教育や,「やりづらさ」を克服するための支援など,よりよいコミュニケーション教育ための実践・研究を日々進めています。

▶引用文献:
中野美香 2014「ディスカッション:学問する主体として社会を担う」 『大学教育:越境の説明を育む心理学』ナカニシヤ出版 pp.111-126

▶研究室のサイト:
コミュニケーション教育のための教授学習支援
http://www.commedu.net/

研究室学生の就職先(過去実績)

福岡工業大学は上場企業と大手・中堅企業への就職が70%を超え、国公立大学と並ぶ有名企業400社への就職を実現しています。全学教育担当のため,以下は大学としての就職実績です。
https://www.fit.ac.jp/syusyoku/fit/p4.html
工学部の就職実績
https://www.fit.ac.jp/susume/

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