新生企業投資株式会社 プロフェッショナルインタビュー

事実をベースに語れる人材を目指せ【新生企業投資株式会社/中尾陽平氏】

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新生企業投資株式会社(新生PIグループ)バイアウト投資チーム ディレクター 中尾 陽平 氏

東京工業大学 工学部建築学科 卒業、東京工業大学大学院 社会理工学研究科 修了

新生銀行グループの投資銀行業務が結集して2013年に発足した新生PIグループ。変動の激しいビジネス環境の中、企業の経営や資金調達に対する課題を解決するプロフェッショナル集団に不可欠な理系人材について、現場の第一線での活躍の現状を聞いてみた。

1.学生時代の研究は一つのプロジェクト

― 学生時代の取り組みについてお聞かせください。

中尾氏:
pro_shinsei-c_nakao_02「東京工業大学の工学部建築学科に所属し、建築分野の勉強をしていました。建築といってもデザイン、材料や構造ではなく、もっと工学寄りの建築システムについて学んでいました。具体的には防災設計をコンピュータに計算させて経済的な効率化を図るというものが私の研究テーマでした。プログラミングに近いイメージです。大学院では社会理工学研究科でバリアフリーの最適化のためのシステム検討をしていました。こちらでは同時にバリアフリー法についても勉強し、法律に基づいても効率的にならないなら機械的アプローチをとる方が効率はいいのではないかというようなことを研究していました」

― かなり高度な専門性を要求される分野の研究をされていたようですが、就職活動の時期はどういったことを考えたか覚えていますか?

中尾氏:
「もともと建築に入ったのは、一つの事を多面的に研究してみたいという理由からでした。建築は都市計画に代表されるように社会的な側面もありますが、材料の面からみると化学的分野になりますし、構造ということでしたら物理ということになります。そのように色々な局面から検討できるところに魅力を感じていたので、白衣を着て一つの分野を極めたいというような思いは持っていませんでした。そういう意味で大学院までの6年間で、建築を工学的に見ていくという一つのプロジェクトを終えたという達成感はありました。ですから研究者になろうというよりは、次はどういったものに取り組んでいこうかということを考えていました。もちろん就職先として防災やバリアフリーといった研究が生かせるようなインフラ系の就職先も検討しましたが、それよりも工学的に色々なものを解決していきたいという思いが強くありました。当時は大前研一さんの著書もよく読んでおり、経営工学に近いコンサルティング業務や投資銀行業務などに興味を持っていました」

2.工学的アプローチを生かした経営支援を目指して

― その中、なぜ新生銀行を選んだのですか?

中尾氏:
「当時、新生銀行の企業再生を担当しているチームの人と話をする機会がありました。そして工学的アプローチで経営支援ができるのではないかという私の思いを伝えたところ、投資にも似たようなアプローチがあるということを言われました。経営改善をしていくとき、提案だけでなく、自分で手を入れていくスタイルもあるのでコンサルよりも刺激的かも知れないよ、と言われ興味をもち新生銀行に入行することにしました」

― 投資において「手を入れる」というのはどういうことでしょうか?

中尾氏:
「株式投資というと、上場株の売買をイメージする方が多いかも知れませんが、実際に私が行ってきた業務はプライベートエクイティ投資といって、未上場企業の株式を現株主からお譲り頂くなどして過半数を取得するビジネスです。過半数を取得した私どもは、経営に関与する株主として会社を支援していく立場になります。そういう意味ではわが身のこととして投資先企業様の経営を考えるようになるのですが、それがとても魅力的に思えました」

3.企業分析で基礎力を

― 新生銀行入社後の業務の変遷を教えてください。

中尾氏:
pro_shinsei-c_nakao_04「銀行入行後3年程は企業再生本部の企業開発部というところで企業の分析を行っていました。投資先企業様から決算書をご開示頂き、外的な市場調査を含めて検討し、これからその企業がどのようになっていくかという予測を行った上で、どうしたら業績が改善するか見立てるレポートを新生銀行の社内向けに作成していました」

― その後はどういった業務をされたのでしょうか?

中尾氏:
「その後はクレジットトレーディング部に異動になりました。ここも同じく企業の再生がテーマなのですが、エクイティ(株式)ではなく不良債権に投資をする部隊でした」

― 不良債権に対する投資とはどういう事業なのでしょうか?

中尾氏:
「返済がお困りのお客様の債権を、他の金融機関から新生銀行がお譲りいただいて、返済できるところまで返済して頂いたら後は債務免除をするなどして企業にきちんと再生していただくというソリューションをご提案します。既存の金融機関と交渉しつつ、どうなったらその会社が事業として回り始めるのかを投資先企業様と一緒に相談しながら事業の再建を進めていくという事業です。こちらに3年間所属しました」

4.投資先の経営に参画するハンズオン投資

― その後は何をされたのですか?

中尾氏:
「プライベートエクイティ部に1年間おり、事業承継というテーマで「手を入れる」投資に携わり、そこで営業、企業分析などを担当しました。その後にベンチャー企業の支援をさせて頂くVBI(ベンチャーバンキングイニシアチブ)推進部に異動になりました。ここでは設立10年以内のベンチャー企業に対し、単なる投資だけでなく融資も含めたファイナンス支援を提案しました。ここにも3年近くいた後、現在私が在籍する、新生PIグループの新生企業投資へ配属になりました」

― 現在はどのような業務をしているのでしょうか?

中尾氏:
「事業承継でお困りのオーナー企業、特に後継者が見つからないとお悩みの企業に対して、新生PIグループに株式を譲って頂いたうえで、会社の持続的成長を支援する業務です。会社の株式取得後はハンズオンの体制で(会社に自ら乗り込んで)従業員の方と話し合いながら成長シナリオを実行していきます」

― なぜ事業承継の案件でハンズオン投資をする必要があるのでしょうか?

中尾氏:
「オーナーが株主でなくなるということは、会社の中で経営判断をする方がいなくなってしまうということになります。ですから株主が経営チームの組成や経営の意思決定をサポートする必要があるのです。しかし企業の書類を見ているだけですと実情はわからないので、投資先企業の従業員の皆様とのコミュニケーションを密にしながら相互理解を経て正しく判断する必要があります。そういう意味でハンズオンでの投資が必要です」

― ハンズオンとは具体的にどの程度経営に関与するのでしょうか?

中尾氏:
「ケースバイケースですが、投資先企業様にPDCA(Plan-Do-Check-Action)の仕組を導入して、業務をモニタリングしやすくする必要があるので、新生PIグループ内外から取締役を派遣して常駐することも多くあります」

5.理系であることはハンデでなくメリット

― こうした金融の業務は理系の学生にはなかなか馴染みのない分野だと思うのですが、就職するにあたり不安はありませんでしたか?

中尾氏:
pro_shinsei-c_nakao_01「理系だから、専門職だから文系の人に追いつけるかというような不安は多少あったかも知れませんが、実際には大きな差は感じませんでした。逆に理系というだけで注目されることが多く、数字の扱いには厳しいなどという信頼を得ながら仕事をすることもありました。文系の勉強に関しては学生時代ほとんどしていなかったのですが、仕事をする中で無理なくキャッチアップできました」

― 具体的にはどういう分野のことをキャッチアップしなければいけなかったのですか?

中尾氏:
「世の中のニュース一般、政治・経済に関するニュースなどはあらためて本を読むなどして勉強しました」

― 財務の知識などでは不安はありませんでしたか?

中尾氏:
「財務の知識に関しては特に遅れていたというギャップを感じたことはなく、むしろ一緒に勉強してきたという感じがします」

― ということは、学生時代に文系科目を勉強してこなかったからといって気おくれする必要はないですか?

中尾氏:
「ないですね。積極的に挑戦して問題ありません」

6.事実をベースに話をする

― 逆に理系で培った思考方法などで業務に役立ったことはありますか?

中尾氏:
「理系の場合、実験結果などの『事実』が研究のベースになります。仕事でも事実をベースに話をする習慣があると、人によく話を聞いてもらえる気がします。若手の頃でも実際に数字がこうなっているという事実を示すと、上司の理解も得やすかったと思います。文系理系を問わず、本やメディアで得た知識だけで判断してしまう人もいますが、私としては理系の工学的考え方が生かせるところは多いと感じます」

― 日々の業務は具体的にどのようなことをしているのですか?

中尾氏:
「ほとんどの仕事が泥臭い地味な作業です。仕事の仕組みとして一つの案件は2,3人でチームを組んで、投資前のお客様との交渉から投資後のイグジット(株式の売却などで投資を回収すること)まで担当する仕組になっています。ですからまずはお客様と何度も会いながらニーズの掘り起こしをします。そして開示して頂いた資料を基にそれを表計算ソフトに打ち込み、外部のマーケットのデータを照らし合わせながら分析し、企業の価値を評価します。この時の表計算シートは場合によっては30枚、40枚にもなります。そして最終的にでてきた株式の評価額とお客様のニーズがあっているかお話をしながら株式譲渡に持っていくというのが大まかな流れです」

7.自己資金によるオーダーメイドの投資

― 案件はどこから発生することが多いのですか?

pro_shinsei-c_nakao_03中尾氏:
「オーナーから気軽にご紹介いただく話ではないため、直接ご相談をうかがうのはとても難しいです。ですから、具体的には社長が日々ご相談し、密接な関りを持たれている税理士、会計士、弁護士などを通じてご紹介いただくという方法が手段の一つになります。それからすでにご売却を決意されている方はM&Aの仲介事業者にご相談されていることが多いので、そうした事業者からご紹介いただくこともあります。またもちろん新生銀行グループから紹介されるということもあります」

― 実際に案件を紹介されてから、資金回収まで通常どれくらいの時間がかかるのですか?

中尾氏:
「新生PIグループでは、大体3-5年を掲げています。少し専門的な話をすると、私たちは投資をするといっても、個人の投資家を募ってファンド(資金プール)を作るのではなく、銀行の自己資金を使うので、慌てて結果をだす必要がなく、一般の投資ファンドと比べると緩やかに対応できます」

― 新生PIグループのバイアウトファンドとしての強みはどういったところにあるのでしょうか?

中尾氏:
「一般の投資家よりもオーダーメイドで話を聞けるところだと思います。たとえば、会社の中に後継者候補の方がいて、あと2、3年ほど経営を学んでいただく必要がある、という状況を考えます。そういった折に、オーナーの諸事情によって、一般の事業会社に株式を譲ってしまうと、事業会社の都合によって、その後継者が代表になるチャンスを奪ってしまう可能性があります。一方、新生PIグループではある程度長い期間で考えることができるので、その経営者の卵の方と一緒に勉強しながら、最終的にはその方に代表になっていただく、そういった事業承継のニーズに対応することも可能です」
「創業者は10年、20年という長いスパンで会社を育ててきた中で、会社をどう残していきたいかという想いが残っています。その想いをきちっと汲んであげられるのは、(投資家からの儲けなければいけないというプレッシャーのある)一般のファンドでは難しい面があります。我々もビジネスではありますが、そうした思いを合理的な範囲で聞いてあげられるのは強みだと考えています」

― 新生PIグループで事業承継のハンズオン投資を行いたいという学生は、どのようなキャリアパスを目指せばいいのでしょうか?

中尾氏:
「私が歩んできたコースと似たようなキャリアパスになると思います。まずは企業分析を学んでいただくことが投資業務の基礎体力になるでしょう。分析は机上でのデータ解析だけではなく、実際にお客様のところへ行ってお話を伺って会社を理解することも大切な分析になります。その次の三年くらいは1つの案件に一貫して携わるのがいいと思います。一つのディールを最初から最後まできちんと見ることができるようになると、投資の醍醐味もわかって来るようになります。その後チームで行う大きな案件でもマネージャーとして自分で進めていく立場になっていくのだと思います」

8.就活よりも研究

― 就職前の学生が学生時代にしておくべきことは何かありますか?

中尾氏:
pro_shinsei-c_nakao_05「就職活動よりも、研究を一生懸命やってみることが大切だと思います。それは研究者になるかならないかの問題ではなく、一つのことに一生懸命打ち込んできたかどうかによって社会に出た後も違いが出てくるからです。一つのことに打ち込んだ人は、何事にも深い思慮ができるようになると思います。学生の時は就職先のことを早めに勉強しておきたいという気持ちになりがちですが、それは入ってからもできます。それよりも大学では研究という一つのプロジェクトをきちんと終わらせるようにする姿勢が大事だと思います」

― どういう方が新生PIグループに向いていると思いますか?

中尾氏:
「私が一緒に働きたいのは好奇心が旺盛な方です。色々なことに関心を示してもらいたいと思います。嫌々ながら仕事をすると業務の質にも出てしまいます。反対に多くのものに関心を持てる人ですと、やっているうちに楽しくなってきます。ですから色々なことに関心を持って物事をみている人の方が向いていると思います」

― 最後に学生に何かメッセージはありますか?

中尾氏:
「新生企業投資の中にも理系人材は多くいますし、理系人材は重宝されます。実際に何が起きているかを見極めた上、事実ベースで物事を語れることは投資においては重要です。そして学生時代実験を行って、こういう事実から次はこうしようという改善のプロセスを経てきた理系人材の方がそのような思考で考えやすいのではないかと思います。理系の方でも専門でやられていたことから少し離れて、広く世界を見ることに関心があれば投資の世界でも特性を生かすところがたくさんありますので、是非新生PIグループに来て一緒に頑張りましょう。」

― どうもありがとうございました。(了)

 

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