プロフェッショナルインタビュー 株式会社荏原製作所

とにかく好きな事に熱中して思う存分やるのが一番【株式会社荏原製作所/野口泰氏】

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株式会社 荏原製作所 野口 泰氏

株式会社荏原製作所は1912年の創業以来(当時はゐのくち式機械事務所として創業)、世界有数のポンプ技術を持つ企業として、送風機、冷凍機などの国内生産初となる製品を含め、数多くの製品を開発し、社会に供給してきた。現在ではポンプ事業を含む風水力事業の他、精密・電子事業、環境エンジニアリング事業にも力を入れており、確かな技術で世界中のインフラを支えている。
その荏原製作所の事業内容と、どのような人材を求めているのかを、荏原製作所の人事・法務・総務統括部、人材開発室採用グループの野口泰グループ長に尋ねてみた。

100年以上蓄積されたポンプ技術

― 荏原製作所の事業内容についてお聞かせください。

pro_ebara_noguchi_01野口氏:
荏原製作所は現在、5つの事業を3つのカンパニーに分けて展開しています。第一の事業がポンプ事業です。皆様は蛇口をひねれば水がでることを当たり前のように思っていますが、それもポンプがあればこそのものなのです。普段意識することはありませんが、発電所や製鉄所、様々な製造工場など、水を使うあらゆるところでポンプの技術が生かされているので、私たち荏原製作所は多岐に渡る業界と関わりながら業務を行っています。一般家庭でも農業においても利用されますし、大きなところでは海水を真水に淡水化するためのプラントで使用されるポンプを、中東の国営企業に提供することもあります。ポンプというものを普段身近に感じる機会はあまりないかも知れませんが、人々の生活になくてはならないとても大切なものです

荏原製作所では、104年前からポンプを作り続けています。その技術の蓄積や実績が評価されています。ポンプは生活に直結する大切なインフラを担うものなので、長年高品質のものを提供しているという実績がお客様の信頼となっています

売り上げの約6割を占める風水力機械事業

野口氏:
第2の事業がコンプレッサー・タービン事業です。先ほどのポンプ事業は液体を扱うものですが、コンプレッサー・タービン事業では気体を扱っています。この技術はオイル&ガス業界など化学プラントでは必須のものとして使われています。こちらは生活とは直結していないのでわかりにくいかも知れませんが、産業分野ではなくてはならないとても大切な機器です

第3の事業が冷熱事業です。こちらは大型冷凍機や冷却塔といった空調機械を扱っています。空調機械といっても、ご家庭や自動車などで使われているエアコンとは異なり、ビル丸ごと一棟を冷やしたり、地下街ごと冷やしたりする空調設備のことをいいます

ポンプ、コンプレッサー・タービン、冷熱の三つの事業をまとめて風水力機械カンパニーとしています。これらは流体機械、回転機械、ターボ機械を応用した事業で、荏原製作所の売り上げの約6割を占めています

世界の半導体進化を支える精密・電子事業

野口氏:
第4の事業が半導体製造装置を扱う精密・電子事業です。スマートフォン、PC、自動車と世の中の便利なものを支えているのが半導体です。人間が便利なものを求め続けているので、半導体は常に進化しています。その進歩のスピードは考えられないほど早く、半年前のものがすでに古いものとして価格競争に晒されるという業界です。荏原製作所では、世界最先端の半導体メーカーのアイディアを実現させながらも、より早くより微細に作れるような半導体製造装置を製作しています。精密・電子事業では常に未知のことに取り組むものであり、スピード感があるとてもチャレンジングな仕事です

地域に根差した環境インフラを提供する環境エンジニアリング事業

pro_ebara_noguchi_02野口氏:
5つ目の事業が環境エンジニアリング事業です。こちらはごみ焼却プラントを中心に環境インフラを提供するものです。さらにはそれを運転・維持・管理までしていくというのが時代の流れになってきています。環境エンジニアリング事業は非常に足の長い事業です。まず地方自治体などが基本~詳細計画を策定するのに数年かかり、それを建設するのに3年~5年かかります。そこからさらに運転維持管理ということになるとさらに15~20年も続く事業です。前4つの事業がメーカー的な仕事であるのに対し、こちらの事業は地域に根差したスケールの大きい事業になります

以上の5つの事業は、どれも人様の目につく派手な事業ではありませんが、どれも人々の生活に欠かせないとても大切なものです。実際に荏原製作所で働く人々も派手好きというよりは、地味だけれども社会貢献性の高い事業に携われていることを誇りに思いながら働いている人が多いです

エントリー時に大きな方向性を選択

― 5つの事業部の採用はどのようにされているのでしょうか?

野口氏:
荏原製作所の会社説明会は一括して行っています。ただ先述の通り、メーカー的色彩の強い風水力事業及び精密・電子事業とプラントエンジニアリングをする環境エンジニアリング事業では事業の特徴も異なり、必要な資質も異なってきますので採用形態を分けています。前者は機械・電気系の学生を募集しているのに対し、後者は機械・電気系の学生に加え、化学、化学工学、土木、建築系の学生も募集しています。学生の方にはエントリーの時にどちらかを選んで頂いています

― それぞれにどういった方が向いているのですか?

野口氏:
メーカー的色彩の強い風水力事業と精密・電子事業は、設計から調達、製造、品質管理・検査、販売とすべて自社で行います。そしてエンジニアもそのすべてに関わってきます。ですから、ポンプのことや半導体製造装置のことをとことん追求する職人気質のような方が向いています。それに対し環境エンジニアリング事業は、予算規模も何十~何百億円と大きく、自社技術ですべてをまかなうこともできません。そういう意味では大きなものをチームで作り上げたいという方が向いていると思います。環境エンジニアリング事業は荏原環境プラント株式会社にて事業運営しております。入社後荏原環境プラント株式会社に出向して頂くという形になります

エンジニアの面白さ

― エンジニアはどのような業務を行うのですか?

野口氏:
たとえばポンプ事業でも二つの事業があります。カスタムポンプと呼ばれ、お客様のニーズに合わせて一つひとつ作っていくものと、標準ポンプと呼ばれる大量生産型のポンプです。大量生産型のポンプは不特定多数の人が対象になってくるので、そこにどのような製品を開発して投入すれば受け入れられるかということを考えるのが標準ポンプのエンジニアの仕事の面白さです。たとえば新興国で都市開発がどんどん進んでいるとすると、その新興国ではどのようなポンプがベストなのかをマーケティングと連携しながら作っていきます。もちろんいいものを作ることも大切ですが、どれだけ安く作るかが勝負になることもあります

それに対しカスタムポンプのお客様の技術的要求はとても高いという特徴があります。たとえば中東の海水を淡水化するにしても、日本海の水と中東の海水では塩分濃度も温度も違います。ではそのためにどのような材質がいいのか、構造がいいのかなどという一回一回のお客様の要望を技術的にクリアしていくのがエンジニアとして面白いところです

一方、環境エンジニアリング事業では提案力が非常に重要となります。お客様がどの様な施設を望んでいるのか?ごみを焼却するだけではなく、他の用途としての有効活用をどれ程望んでいるのか?これらのニーズに応える施設や機器をチームとして考え、実践することが醍醐味です。最終的な受注は入札で決まるのですが、入札は単なる価格競争ではなく、技術・値段・会社の実績などが総合的に加味される総合評価方式です。受注するまでは情報収集しながら他社と差別化できる提案を行うことが重要となります。一つのプロジェクトは計画段階から数えると10年以上かかることがあるので、一人のエンジニアが携わるプロジェクトの数はさほど多くはありませんが、一物件あたりの関わる期間が長く内容が濃いので、個人の想い入れも大きくなり、印象的な仕事となると思います。

グローバル競争に向けた生産革新運動

― 会社全体としてはどのようなチャレンジがあるのですか?

野口氏:
荏原製作所は創業時から70年くらいは日本を中心に成長してきました。国内事業には、時間とお金をかけていいものを作るという発想がありました。しかし今の時代、スピードやより安いコストが求められ、新しい生産技術や生産方式が求められています。荏原製作所では『生産革新運動』と称して、すべてのものの作り方を一から考え直すようにしています。そのようにしないと世界のスピードにはついていけない時代です

専門性を養うOJT

― 採用後の配属はどのようにしているのですか?

野口氏:
まずは本人希望を聞きます。就職活動の時は会社の外面的なことしか見えていないので、入社して会社内面が見えてきた4月の下旬に配属面談をして本人の希望を聞きます。これがベースになりますが、それに事業戦略や人員戦略も総合的に加味して最終的な配属が決まることになります。

― 配属後の教育はどのようにしていますか?

pro_ebara_noguchi_03野口氏:
荏原製作所で扱うエンジニアのスキルは、かなり高度な専門性が要求されるものが多いので、OJTによって養われます。ですから新人には必ず一人につき一名教育係(OJTリーダー)が付きます。その教育係も新人とどのように向き合うべきものなのか、を理解しなければ、教育はできません。そのため人事がしっかりと教育係を育成する研修(OJTリーダー研修)を行っています。また教育係だけでなく、その上司も巻き込んだ部門全体で新人を育てていくという研修コンセプトです。

― その後のキャリア形成はどのようになるのでしょうか?

野口氏:
先ほども申し上げたとおりエンジニアの場合は専門性が高いので、事業部が変わることはあまりありません。しかし現在荏原製作所では一人ひとりのキャリアを会社と本人でしっかりと向き合って決めていくキャリアマネジメントシステムという人材育成の取り組みを去年から行っています。背景にあるのは働き方の多様化です。これは働き易い職場環境だけでなく、本人の望むキャリアを積み重ね、成長し活躍していくシステムを目指しています。

― 具体的にはどのようなことをするのでしょうか?
入社3年目以降の社員全員にインタビューをし、将来どのようになりたいかをヒアリングします。その内容を尊重し育成プランを立て、事業戦略や会社側の想いと個人の想いのベクトルを合わせるようにします。本人にその結果をフィードバックしています

― 大変な作業ですね。

野口氏:
我々は社員の方々が、モチベーション高く、能力を最大限発揮できる職場環境を提供するためには、最良の方法だと思って取組んでいます。社員が自身でキャリア目標を明確にもって、業務にのぞめるように行っています

高い海外赴任の可能性

― キャリアの中に海外赴任の可能性はあるのでしょうか?

野口氏:
かなり可能性はあります。現在荏原製作所では海外での生産・サービス拠点を置くことが増えてきていますし、売上の海外比率が5割以上に及んでいますから、赴任でなくとも海外と関わることは多いです。一年目から海外出張する人もいます

また海外若手派遣制度というものもあり、若いうちから世界各地でのビジネスを知る機会もあります。これは2年間、業務ミッションを持ち海外赴任する制度です。

― 若い人は海外赴任に対して前向きですか?

野口氏:
かなり前向きです。そして荏原製作所でもそういう人材を求めています。時には先進国ではなく水インフラに困っている国や地域、や、これから都市が成長している地域に行くことも少なくありません。そうした場所でもどんどん臆することなくいける人は頼もしいですね

受容力と強い意思力を兼ね備えた人材

― 荏原製作所が求めるのはどのような人材でしょうか?

野口氏:
国際競争が激しくなり、世界中の会社と戦わなければいけない状況になっています。ですから挑戦する、そして勝つんだという姿勢を持っている人はいいですね。また途上国など異文化の地に行って仕事をすることがあるので、自分とは違うものを受け入れられる受容性もとても大切になってきます。ただそれは受け身でいろということではありません。きちんと自分でも考えて動ける、自己表現のできる人です。受容する力と意思を貫く力という一見すると相反する二つの能力を兼ね備えた人物はとても魅力的だと思います。そういう方はどこへ行っても活躍できると思います

間違っていてもいい、熱い情熱が大切

― 面接ではどういったところを見ているのですか?

野口氏:
もちろん学生時代の研究や専門性は見ています。ただそれだけではなく、これまでどういうことをやってきて、荏原製作所に入ってこういうことがやりたいという明確な意思と熱意を持っている学生には、たとえ的外れなことをやりたいと言っていても魅力を感じます。認識が間違っている場合はそれを正すかも知れませんし、そういうことはできないけど、こういうことなら叶えることができるというようなお話をするかも知れませんが、こういうエンジニアになりたい!という熱い思いを持っていて欲しいですね

挑戦をいとわない学生は魅力的

― どのような学生に魅力を感じますか?

野口氏:
例えば実際の現場では設計するだけでは終わりません。設計したものを作る苦労も伴います。理論上はできても、それをどうやって実現させるかいう局面が出てきます。学生時代に苦労して、トライ&エラーを繰返し意欲的に研究に取り組み、やり遂げた人は魅力的です

とにかく好きなことに熱中して

― 就活以外の残りの学生生活をどのように過ごすべきだと思いますか?

pro_ebara_noguchi_04野口氏:
学生時代にしかできないことに取り組んで欲しいと思います。よく内定を出した学生からどのような準備をして過ごせばいいかと聞かれるのですが、大抵『しこたま好きなことをやっておいて』と答えています(笑)。専門性や英語などの必要スキルは会社に入ってからいくらでも学ぶことができるので、バイトでも研究でもサークルでもいいので、好きなことを思う存分やるのが一番です。一つのことに熱中できる機会はそうはないので、そうした経験は必ず何かの財産になるはずです

誇りある縁の下の力持ちたち

― 最後に学生たちに何かメッセージはありませんか?
荏原製作所は、決して派手なことをしているわけではありませんが、世の中になくてはならないことをやっている会社です。そして荏原製作所はそのことを誇りに持っている人たちが集まっている会社です。そういう仕事にやりがいを見いだせる人と是非一緒に仕事ができればなと思っています。よろしくお願いします

― ありがとうございました。

 

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