プロフェッショナルインタビュー カルビー株式会社 プロジェクト秘話

人気商品を支える若きリーダー【カルビー株式会社/村上 恵子氏】

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カルビー株式会社 研究開発本部 開発2部 Jagabee・ベジップスチーム 村上 恵子 氏

2008年入社 千葉大学大学院 自然科学研究科 卒業

1949年の創業以来、「かっぱえびせん」「ポテトチップス」「じゃがりこ」「じゃがビー」「フルグラ」と時代に合ったヒット商品を出し続けてきた日本を代表するスナック菓子メーカーのカルビー株式会社。そうしたヒットの裏には多くの研究者やエンジニアの努力が隠されている。同社で活躍する二人の理系出身者にスポットを当て、理系学生の将来の活躍の場としてのカルビーに注目をしていきたい。

1.好きなものをつくりたくて

― 学生時代の取り組みを聞かせてください。

村上氏:
「大学は工学部の化学科でした。大学でも大学院でも有機合成の勉強をし、環境負荷の少ない化学実験の手法を考えることを研究していました」

― それ以外に取り組んでいたことはありましたか?

村上氏:
「オーケストラでチェロを弾いていました。寝食を忘れてチェロを弾いていたいという学生でしたので、研究態度はあまり真面目な方ではなかったかも知れません」

― どのような就職活動をしたのですか?

村上氏:
「学部を考えるときに漠然と将来はモノを作る仕事がしたいなと思っていました。身の回りにあるもの、自分が普通に生活をしていて手に取れるものに魅力を感じていたので、最終製品のメーカーがいいと思いました。特に、キレイなもの、おいしいもの、気持ちのいいものが好きだったので、そういうものを作れたらいいなと思い、香料会社、化粧品会社、食品メーカー、生活用品メーカーを中心に受けました」

― カルビー入社後はどのようなキャリアを積みましたか?

pro_calbee_murakami_01村上氏:
「最初の配属はポテトチップス製造課でした。これは工場勤務です。ラインに入ることもありましたが、メインの仕事は生産計画を立てることでした。工場の流れを把握し、物流からのオーダーの数字を一番効率よく、間違いなく作るにはどのような生産順序でラインを動かせばいいかを考える仕事でした。量や製品の種類を把握して、どういうことが起きると生産量が落ちてオーダー通りに作れなくなるのか、それをリカバリーするにはどうすればいいのかを考える生産管理に近い仕事でした。私自身は研究職を希望していたのですが、現場を知ることが大切ということから最初は現場への配属でした」

2.年間200以上の新味開発

― その後の配属は?

村上氏:
「2010年に宇都宮のR&Dセンターでポテトチップスの開発を行う部署に配属されました。そこでは新味開発がメインでした。ポテトチップスは年間200~300というものすごい数の新味が発売されています。それをどのような売り場をつくり、どんなターゲットのお客様に食べていただきたいか、企画担当者と話しながら商品を作っていきました」

― どうすればそれだけたくさんのフレーバーがつくれるのですか?

村上氏:
「基本的に販売計画はマーケティング本部(=企画担当)が立てます。それを年間のどの時期に何を発売しようかというのはマーケティング主導で決まり、期首の時点で年間計画が決まります。計画を立てて確実に実施することで、たくさんのアイテムを効率よく生み出しています。」

― 開発部は何をするのでしょうか?

村上氏:
「まず味のテーマが決まるのですが、たとえば一口に『梅』といってもどのような梅なのかを明確にする必要があります。『梅干し』なのか?『はちみつ梅』なのか?企画と開発とでスタート段階でイメージをすり合わせ、そこに向かって試作を始めます。そして出来上がった試作品がイメージと合っているのか、どうやって修正していくのかを考えていきます」

3.ブランド維持のための奮闘

― その中でどのような担当をしていたのですか?

村上氏:
「一番大きい仕事は堅あげポテトのブランドをどのように維持するのかということでした」

― ブランドを維持するというのはどういうことでしょうか?

村上氏:
「大きく二つあります。一つは味です。堅あげポテトにはベーシックな味と、それを盛り上げるための味替わり品があります。ベーシックな味のリニューアルや味替わり品の発売をどのタイミングで行うかを決めていくことが大事です。そしてもう一つは品質のバラつきに対する管理です。全国の工場で生産するので、長年作っているうちに品質にバラつきが生じることもあります。そうしたことが起きないように生産工程を改善することによって、工場ごとの品質を均一にし、ブランドを成長させていくというものです」

「その後、じゃがビーの開発に異動になるのですが、そこでも同じような課題がありました。じゃがビーは全国5工場で生産しており、ブランドもちょうど10年経ったので、何もしないでいると停滞しかねない時期です。どこの工場でも同じものが作れるよう品質の維持と向上に努めています」

― 就活時代に思い描いていた仕事と実際にカルビー入社後の仕事に差はありましたか?

村上氏:
「学生時代はゼロから色々なものを試行錯誤して新製品を作ることだけが製品開発だと思っていましたが、既存ブランドの維持も開発の大切な仕事という点は入社してからの気づきでした。もちろんゼロから作り出す人も必要なのですが、いつかその人も異動や定年などでいなくなってしまうので、きちんとブランドを守っていくことのできる人がいるのも大切だということに気づいてから、仕事によりやりがいを見出すようになりました」

4.自分の仕事のテリトリーの確立を

― どのようなところに仕事のモチベーションを感じますか?

村上氏:
「細かいところで言うと、自分の担当した味の商品を買って食べてもらって『おいしかったよ』と知り合いに言われるのは単純に嬉しく、仕事をしている楽しみです。それとは別に何か大きな課題に取り組んでいる時に『これは村上に聞けばいいな』と誰かが思ってくれた時は、自分の仕事のテリトリーがしっかりとできてきたな、という気持ちになりモチベーションがあがります」

― これまでの仕事で印象的なものは?

pro_calbee_murakami_02村上氏:
「新味の開発は、慎重に行い間違えなければできる課題が多かったように思います。それと比べると品質課題の方がよりチャレンジングです。何に向かって仕事を進めていくのかを自分で決めなければいけませんし、それを工場側にもわかってもらえるように説明しなければいけません。そのためにはしっかりとした裏付けも必要ですし、協力を得て解決に向かって動いていただく必要があります。それはハードルが高いことでもあり、醍醐味でもあります。今の業務がそうですが、なかなか大変です」

― どういうところが大変なのでしょうか?

村上氏:
「工場は工場でベストを尽くして誇りを持って生産しています。そのため改善を提案しても、理解を得るのがときには大変なこともあります。先々に生じうる課題と現状を説明しながら理解してもらう必要がありますし、確固たる意志を持って説明しなければいけません。ただ向かい風に立ち向かっていった仕事はエネルギーをより使う分だけ印象に残ります」

 

 

5.ライフステージを意識したキャリア形成を

― 村上さんの活躍は若い女性の希望となると思いますが、カルビーは女性にとってどのような職場ですか?

村上氏:
「カルビーでは女性が働く職場としての不自由はいまのところ感じたことはありません。私はまだ結婚していませんが、結婚や出産してもよほどのことがない限り退職する従業員は少ないです。もちろん会社ですから、わがままの通るところと通らないところがありますが、カルビーはよほど極端なことを言わない限りやりたい仕事を続けることができる環境だと思います」

― 理系の女子学生に対して何かアドバイスはありますか?

村上氏:
「いつかライフステージと仕事を天秤にかけなければいけない時期が来ると思います。就職活動時からそのことを織り込んでおくことは必要です。また就職活動というとどんな仕事をしたいのかが最も大切だと考えがちですが、自分の生活範囲をこういう風にしたいから職場はここがいいという仕事の選び方があってもいいと思います。
将来結婚して子どもができたら家庭か仕事かのどちらかを選ばなければいけない、仕事を取るなら家庭を捨てるということではなく、仕事を取るためにどのように家庭を成り立たせるかということを考えなければいけない時がくることを覚悟しておくことは大切だと思います」

― これからどのようなキャリアを歩んでいきたいと思いますか?

村上氏:
pro_calbee_murakami_03「もし開発の業務を離れることになっても会社に貢献できる人材になりたいと考えています。そのために常に自分の仕事にどこの人がどういう形で関わっていて、どのように役に立っているのかを考えています。その先にいっても仕事ができるかということを意識しながら仕事をしています。でも開発の仕事が好きなので、そこにしっかりと自分のテリトリーを持てるようにしたいです」

― いつ頃から仕事の役割という事を意識するようになったのですか?

村上
「生産計画の仕事をしていた時に、単に数字を組み立てればいいだけでなく、それが崩れた時、物流や販売がどのような影響を受けて困るのかをきちっと理解しておらず、指摘を受けたことがありました。それから相手(この時は物流や販売)のことを考えながら仕事をするようになりました。そうすると相手の仕事も面白そうだな、と関係性を考えるようになったのです。開発でものを作って終わりということでなく、それを工場で生産するためのモノの動き、人の動き、お金の動きを全部イメージして、どんな情報をどんな部署に伝えなければならないかを考えるようになりました」

6.1を100にできるエネルギッシュな人材

― チームのリーダーとして、カルビーにどのような人材が欲しいと思いますか?

村上氏:
「バランス感覚のいい人がいいですね。我が強く個性的な人も魅力的なのですが、それがただのわがままになってしまっては困ります。仕事に関して責任と情熱を持って取り組める人がいいです。専門性とか特殊スキルはあまり重視していません。計算とか専門知識は下手をすると仕事の幅を狭めるだけなので、それらを使いこなす能力を持っている人がよいのではないかと思います。手元の仕事をどうやってうまく料理するかを一生懸命考えて欲しいなと思います」
「また個人的には1を100にできる人材が必要だと思っています。よくゼロイチが大切と言いますが、カルビーにはすでに1と言えるような種をたくさん持っていると思っています。1を100まで持っていけるエネルギッシュな人がいたら嬉しいですね」

7.ひとつのことに打ち込む

― 学生にはどのような学生生活を送って欲しいと思いますか?

村上氏:
「自分のやっていることが何の役に立つのかを常に忘れずに意識して欲しいと思います。仕事は会社の成長に貢献しなければならないので、自分がすることが何のためになるかということを考える癖をつけた方がいいと思います。それとは別に何かひとつ一生懸命打ち込めるものがあればいいと思います」

― 村上さんの場合はオーケストラに打ち込んだようですが、その経験は仕事に生かされていますか?

pro_calbee_murakami_04村上氏:
「オーケストラでは個人は個人の仕事をしなければいけません。個人のテクニックは絶対に磨かなければいけません。ただソロプレーヤーと異なり、個人のテクニックがあり、パートのテクニックがあり、役割があります。別のパートには別の役割があるので、よそのパートのことを気にしながら弾かなければいけません。ただそれは余裕をもって演奏できなければ、他のパートのことなど気にすることはできません。他のことを気にしないで弾いていたら、それは一人で弾いているのと何ら変わりありません。みんなで一緒に楽しんでいるつもりになって、実際は自分だけが楽しい。それでは組織に属する意味がないと思います。組織としてきちんと進めるためには個人は何をしなければいけないのかということを考えるのは、仕事と似ているような気がします」

― 最後に学生にメッセージはありますか?

村上氏:
「自分が『何のために仕事をするのか、何のために就職するのか』という問いかけを自分にすることをおすすめします。就職活動の時期が来たから就職活動する、というのでなく、自分が何のために就職するのかということを考えて欲しいです。それが自分のやりたいことで、それをやっていれば将来自分は満足できるから、ということでもいいですし、生きていくためにお金が必要だから、というのも一つの答えだと思います。いずれにせよ、何のために就職するのかをぜひ、この機会にしっかりと考えてみてください」

― ありがとうございました。(了)

 

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