クォンツ・リサーチ株式会社 プロフェッショナルインタビュー

最先端の現場で金融工学/IT技術を学びながら働く【クォンツ・リサーチ株式会社】

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クォンツ・リサーチ株式会社 代表取締役 CEO 西村 公佑 氏

大阪大学 基礎工学部 制御工学科 卒業

「クォンツ」。
一般には聞き馴染みの薄い言葉だが、膨大な情報量の株価データや財務データを科学的・工学的な考えを駆使して分析・評価するクォンツは、現在の株式投資にはなくてはならないものだ。かつては機関投資家だけが活用していたその情報やツールを、一般投資家にも開放した立役者となったのがクォンツ・リサーチ株式会社。金融工学とITを駆使した製品・サービスを大手証券会社、金融機関、シンクタンクなどに提供する同社の仕事や求める人材について、創業者の一人で代表取締役を務める西村公佑社長に聞いた。

■ 西村公佑 氏 プロフィール
大阪大学基礎工学部制御工学科卒業。電通国際情報サービスにて、金融機関向けソフトウェア開発に従事した後、ソロモン・ブラザーズ、ゴールドマン・サックスにて、証券アナリストとしてクォンツ商品を開発。2000年にゴールドマン・サックス時代の上司、岩月秀樹氏とクォンツ・リサーチ株式会社を創業。2012年、代表取締役に就任。

1.金融工学を駆使したクラウドアプリ

― クォンツ・リサーチ株式会社の提供されている製品・サービスについて聞かせてもらっていいでしょうか?

西村社長:
一言でいうと、金融工学とITのシステム開発を利用して、ウェブやスマートフォンで動くクラウドアプリを作る会社、SaaS(Software as a Service)事業会社です。

― 具体的にどのようなものを作っているのでしょうか?

西村社長:
金融工学を基礎としたコンテンツやサービスをご提供しています。具体的には、株式の分析コンテンツ、ポートフォリオ診断、金融情報などを提供するコンテンツやサービスです。
株式情報といっても、このツールを使えばこれだけ儲かりますというようなものではなく、数ある投資指標の中から、お客様が求めるような情報をご提供するためのサービスです。たとえば配当利回り3%以上の銘柄の中でいいものを買いたいお客様の手助けとなるような情報を提供するといったように、様々なデータをツールという形でご提供しています。

― SaaSの中でも、かなり専門的な金融に特化された会社ですが、クォンツ・リサーチ設立の経緯をお聞かせください。

西村社長:
私は大学卒業後二社目に入った外資系証券会社ソロモン・ブラザーズで、クォンツを分析する証券アナリストになりました。証券アナリストというと、自動車業界、食品業界など、業界をカバーするというイメージが強いのですが、クォンツのアナリストは、株式をデータなどの数値で分析するのが仕事です。その次に転職したゴールドマン・サックスでも同じような仕事をしていたのですが、当時の上司と自分たちの専門性を活かして起業しようと言って2000年に起こしたのがクォンツ・リサーチです。

2.プロの投資情報を一般投資家にも開放

― クォンツ分析のようなものは情報量の多い大手金融機関に適わないというイメージがあるのですが、その中どのようにクォンツ・リサーチを成長させていったのでしょうか?

西村社長:
実はクォンツの証券アナリストが行っている仕事と、我々の行っている仕事は違います。証券会社のアナリストはレポートを書いて、そのレポートを元に機関投資家に有価証券の取引をしてもらうのが仕事です。
それに対して我々クォンツ・リサーチのお客様は、機関投資家というよりは一般投資家の方がほとんどです。様々な証券会社を通じて、一般投資家の方にサービスを提供するBtoBtoCのサービスです。よって、単にレポートを書くという仕事ではなく、一般投資家との間に入る証券会社のためにシステムも併せてご提供するのが仕事です。

以前はクォンツというと機関投資家だけが利用できるもので、情報の入手のしやすさという意味で機関投資家に有利な時代が続いていました。

しかしクォンツ・リサーチが創業した2000年頃からネット証券が台頭し始め、それまで機関投資家しか利用できなかった情報の門戸を、クォンツ・リサーチが一般投資家にも開放しました。当時はまだそのような会社はなかったので、そうした情報へのニーズが劇的に高まりました。その結果、大きく成長できたのだと思います。

3.投資アドバイスするAIも開発

― 現在は同様なサービスを提供する会社も増えてきていますが、その中におけるクォンツ・リサーチの競争優位性はどこにあるとお考えですか?

西村社長:
今申し上げたとおり、我々の仕事はクォンツ分析だけではなく、それをお客様である証券会社などの金融機関が使いやすい形で提供することです。そのためにはITエンジニアリングの力が不可欠です。金融工学はクォンツ・リサーチの業務のキーワードではありますが、実務としては金融工学のスパイスを使いながらITを活用してお客様のご要望にお応えする会社です。そのITの面で優秀なエンジニアが多いのはクォンツ・リサーチの強みです。

― では金融工学はどのような形で活かされているのでしょうか?

西村社長:
たとえば投資にはポートフォリオ理論というものがあります。提唱したハリー・マーコウィッツという人はノーベル経済学賞も受賞しているのですが、投資のリスク(=値動きの大きさ)をできるだけ減らしながらリターンを上げていくための理論です。そのためには投資信託などのように複数銘柄を組み合わせていくのですが、日本の国内株だけでなく、海外株、国内外の債券や土地なども併せてポートフォリを組む場合は組み合わせは頭で考えて出て来るようなものではないので、金融工学が使われます。そうした金融工学を利用し、投資アドバイスのできるAI、ロボアドバイザーも開発しています。ロボアドバイザーは、すべて画一的なものでなく、ご提供する証券会社の投資傾向に併せてカスタマイズしていきます。

4.入社後の吸収力が勝負

― そうした仕事をするには、学生時代にクォンツなどの金融工学を学んでいないといけないのでしょうか?

西村社長:
大学でクォンツ分析を専門的に教えているところはほとんどありません。実際には数学関連の学部や物理、統計を学んだ方で、クォンツ分析を仕事にしてみたいという方が多く応募して下さっています。金融工学を仕事にできるポストは金融機関にも少ないため、金融工学に興味のある優秀な学生がたくさんチャレンジしてくださいます。

― 金融工学のベースとなる高等数学などを学んでいないと入社は難しいのでしょうか?

西村社長:
そのように考えて応募されない方もいるようですが、実際にはそのようなことはありません。先程も申し上げたとおり、ITの仕事や企画、デザインの仕事もあります。 クォンツ・リサーチというとどうしてもクォンツなどの金融工学のイメージが強いので、応募してくださる方に理系の大学院卒の男性が多いという特徴はありますが、実際は学部卒の文系の方も何人もいます。特に動きの早いITの分野では学生時代に学んできたことよりも、入社してからどれだけ吸収するかが勝負となります。学部卒や女性の方にもどんどん応募して頂けたら嬉しいと思っています。

5.求める人物像は柔軟性をもったスペシャリスト

― ではクォンツ・リサーチでは、どのような人材をお求めになっているのでしょうか?

西村社長:
先程も申し上げたとおり、学生時代何を勉強されてきたかは実はそこまで重視していません。私自身も学生時代は制御系の勉強をしており、今の仕事とは関係ないことを学んでいました。それよりも、新しいことにどんどんチャレンジする意欲を持った柔軟な方が来てくださると嬉しいです。実際の現場やお客様のご要望はすごいスピードで変わっていきますので、それに柔軟に対応しながら様々なことを吸収してくれる方がいいです。クォンツと聞くとガチガチの研究者・技術者というようなイメージを持つ人もいるかも知れませんが、理想の人物像は柔軟性をもったスペシャリストです。

― 性格の面では、どのような方がクォンツ・リサーチに向いているとお考えですか?

西村社長:
自分で人生を楽しもうという姿勢を持っている方はいいと思います。仕事に限らず趣味ややりたいことをしっかり持っている人です。そういう方は仕事が一時的に不調に陥っても強いものです。仕事はいつも上手くいくとは限りません。そうした逆境に陥った時、仕事だけが人生だという人は行き詰まりやすいので、遊び心を持っていた方がいいですね。

6.課題解決のクォンツ分析と付加価値の高いシステム開発

― クォンツ・リサーチへの入社が決まったら、入社後はどのようなスケジュールになるのですか?

西村社長:
まず始めに三ヶ月の新入社員研修を行います。研修では、ITに関する基本的な知識は外部の研修機関のプログラムを使って学んで頂きます。またクォンツ部門からは課題が出ますので、それに取り組んで頂きます。その他にクォンツ・リサーチの製品やサービスに関することも学んで行きます。研修が終わったら配属になります。配属は本人の希望、適正、そして部門からの要請などを総合的に加味して決めます。

― それぞれの部門ではどのような仕事をするのでしょうか?

西村社長:
クォンツ部門では、もちろんクォンツ分析が主な仕事になります。あくまでもお客様のためのサービスですから、論文を書くのが仕事というわけではありません。時には複雑な高度な分析よりもシンプルで使い勝手のいいものが優先されることもあります。あくまでもお客様の課題を解決するためのクォンツ分析です。

IT開発部門では、ソフトウェアの開発をします。ソフトウェアの設計も当然するのですが、そこから外部の業者に丸投げするようなことはしません。実際に自分たちでプログラミングしながら作っていきます。特に付加価値の高い重要な部分は必ず自前で行います。

ソフトウェアづくりには、設計から開発、テストなど様々な工程がありますが、始めは難易度の低いところから入って頂き、スキルレベルの上昇に伴って責任の重い仕事へと移行していきます。

7.最先端の現場で実践的スキルを習得

― クォンツ・リサーチ入社後はどのような成長の機会があるとお考えですか?

西村社長:
クォンツ部門とIT部門で若干異なってくると思いますが、まず共通して言えるのは理論的なことを沢山学ぶ機会がありながら、教科書的な学びに留まらず世の中の生きた知識や技術を身につけられるということです。

クォンツ部門に関して言うと、そもそもクォンツ分析を仕事にできるところがあまりありません。証券会社でも実際にクォンツ分析を行っている人の数は極少数ですので、クォンツ分析を学びながら仕事ができるというのはとても貴重な成長の機会だと思います。

またITに関しては、技術の流行り廃りが激しいので現場の最前線でどんどん新しく出て来る技術に対応していくだけで大きく成長します。

たとえばかつてならば金融機関はセキュリティーの都合上、かならず自前のサーバを用意していたのですが、最近ではプロモーション時の瞬間最大風速に対応するためにアマゾンが提供しているAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)のようなクラウドサービスを利用することも出てきました。こうしたサービスや技術に実践的に対応して吸収していくことによる成長は大きく、どこに行っても通用するスキルが身につきます。

8.ラフな服装、野球、そしてケーキ会

― 西村社長からご覧になったクォンツ・リサーチの社風はどのようなものですか?

西村社長:
和気あいあいとしていてフラットな職場だと思います。「金融工学」という言葉が一人歩きしてしまうので、金融的なガチガチな会社だと思われる方もいらっしゃるのですが、実態はIT企業に近く、服装もお客様のところに行かないときは皆ラフな服装です。

社内に野球チームがあって、年に一度大会に出たり、フットサルやテニス、ゴルフなどをしたりすることもあります。スポーツ好きの人は大歓迎です(笑)。また毎月、誕生月の人を祝うためにケーキ会を開催して皆でケーキを食べたりと、和やかな雰囲気だと思います。

9.与えられた環境で付加価値と自己表現を

― 最後に就職活動中の学生にメッセージはございますか?

西村社長:
就職活動はなかなか思うように進まなかったり、大変なことも多いと思います。でもなかなか内定が取れなくても、ここは自分に合った会社じゃなかったんだ、くらいの気持ちで受け止めてください。そして最終的に決まったところが自分に合っていたところだったと考えてください。

何がよくて何が悪いかなどという答えは実はないもので、与えられた環境でベストを尽くしてみてください。クォンツ・リサーチでも、当初の想定とは違う仕事をさせてみたら、その分野のエキスパートになったというケースもあります。

実は私自身も理系で大人しいタイプで、勉強も得意ではなかったので、まさかこういった形で人前に出て喋るような立場になるとは思ってもみませんでした。

でも大半の仕事はやり方次第で付加価値をつけて自己表現をすることができるようになると思いますし、それによって評価されてやりがいも出てくるものです。

大変でしょうが、就職活動を乗り切って人生を楽しんでください。

― どうもありがとうございました(了)

 

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