プロフェッショナルインタビュー ピジョン株式会社 プロジェクト秘話

毎回ホームランを狙っています【ピジョン株式会社/叶谷 大輔氏】

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ピジョン株式会社 開発本部 ベビー大型商品開発部 ベビー大型商品設計グループ 叶谷 大輔 氏

千葉工業大学 工学部 電気電子情報工学科 卒業

哺乳びん、ベビーカーなどで赤ちゃんやママやパパの日常を支えるピジョン株式会社。「愛」を経営理念とし、「愛を生むのは愛のみ」を社是としているピジョンを技術的に支えているのは理系人材。同社の最前線で活躍する二人のエンジニアにその仕事のやりがいを聞いてみた。

1.身近なテーマで就活

― 学生時代の取り組みについて聞かせてください。

叶谷氏:
「大学1、2年生の時は電気・電子について学び、3年生からは情報を勉強していました。情報といっても情報処理のようなものではなく、移動体通信のハード的な勉強でした。卒業研究は「プラズマを使った衝突脱励起係数」というテーマでした。」

― 就職活動のときはどういったことを考えましたか?

叶谷氏:
「大学院に進学するという選択肢は考えず、就職することに決めていました。というのも当時すでに子供がいたので働かなくてはいけないと思っていたからです。就活に関しては大学での専門が電気系でしたので、電気系の就職先も受けていたのですが、妻から『せっかく子育ての経験があるのだから、そういう業界も受けてみたら』というアドバイスをもらい、ピジョンも受けることになりました。家の中に色々なピジョン商品があふれていたので、ピジョンの選考を受けるのには十分な動機があったと思います。実際に、学生時代に子どもがいて、子育てをきっかけにピジョンを知り、入社したという社員も割といます。」

― ピジョンですと電気系の仕事はあまりない印象がありますが、入社前はどういったことを期待していたのですか?

叶谷氏:
「選考の面接で先輩社員から仕事の話を聞く機会があり、赤ちゃんとママ、お年寄り向けの様々な商品に携われると聞いたので、期待で胸を膨らませていましたが、その時点では具体的に何を作りたいという明確なビジョンがあったわけではありませんでした。」

2.新規部門立ち上げの初期メンバーに

― ピジョン入社後の最初の配属はどちらだったのでしょうか?

叶谷氏:
「最初の配属は品質管理部試験評価グループという部門です。世の中に出す商品を、本当に安全か、ピジョンの品質基準を満たしているのかを実際に様々な試験を通して評価する部門です。車いす、歩行器などの大型の福祉機器を担当していました。」

― ピジョンでは新入社員が試験評価グループに配属されることは一般的なのですか?

叶谷氏:
「開発系の部門に配属される場合もありますし、品質管理系の部門に配属される場合もあります。登竜門というわけではありませんが、比較的一般的なコースのひとつです。品質管理の部門を経験したおかげで、現在の開発の仕事でも、ある程度自分で製品の評価をできるのでとても良い経験でした。」

― その後はどちらの配属になったのですか?

叶谷氏:
「ベビー大型商品開発部 ベビー大型商品設計グループという現在の部門に異動になりました。もともとピジョンは哺乳びんなどを始めとする雑貨商品が強く、大型商品のカテゴリーに位置するベビーカーを開発していませんでしたが、新しく部門を立ち上げるということで初期メンバーとして加わることができました。」

― こちらでの業務内容を教えてください。

叶谷氏:
「ベビーカーの企画が上がって来てから、形にして量産するまですべてを担当します。まずデザイン案があがって来るのですが、どうしても設計上、形にするのが難しかったり、金型の問題で製品化が難しかったり、重量的に重すぎたり、機構的に無理なことがあるので、デザインの段階で実現可能かをチェックします。それからプロトタイプモデルを何度か作ります。その後に金型を作って数回モデルを作って、量産できるところまで持っていきます。業務内容としては設計をやりつつ、組み立てをチェックして、商品の評価をするということになります。」

― どういった商品を設計するのですか?

叶谷氏:
「ベビーカーを担当しているのですが、それが新商品のときもあれば、既存商品のリニューアルやマイナーチェンジということもあります。」

3.ゼロから関わる新商品開発

― 新商品の場合はどのような過程でできるのですか?

叶谷氏:
「まずマーケットのニーズを調査します。こんな商品があったらいいなという商品開発のコンセプトがでた後に、その商品が世の中で受け入れられるかという受容性調査をします。ある程度企画として仕上がったプランが、その後、私がいる開発にこういうものが欲しいとリクエストとして上がって来ます。開発としては『こういう商品だったら、この機能とこの機能と…が必要だと思います』という提言をします。そしてデザインと機構を合わせて、CADで2Dの線図を書きます。そこで問題がなければ3Dに起こします。そこで折りたたんだり、開いたりといった構造の確認を繰り返し行い、安全基準を満たしているかなどをチェックしてからモデルを作ります。組み立て上問題がないか、転倒安全性は大丈夫かなどチェックしながら改善を重ね、社内の承認会議を通ったら金型を起こします。そこで金型から試作品を組み立てて、テストを行います。ここでのテストは試作品の強度に始まり、約200項目にものぼる細かい確認を行います。」

― ピジョンでは企画が上がって来てから、開発の手を離れるまでどれくらいかかりますか?

叶谷氏:
「初回の量産まで開発が関わりますので、新商品の場合は大体1年半から2年近くかかります。」

― 開発はどのような体制で行うのですか?

叶谷氏:
「商品の主担当が一人、副担当が一人、ファブリック(生地・繊維)担当が一人、それに品質管理の担当者と評価の担当者がいます。」

4.1年の1/3は海外工場で仕事を

― 設計の担当者は日々、具体的にはどのような仕事をしているのでしょうか?

叶谷氏:
「ピジョンは製品の開発を専門に行い、実際の製作は委託会社の工場ににお願いします。そのため、PCの前でひたすら設計図と格闘するということはありません。委託会社から上がって来た設計が、こちらの希望通りになっているかチェックしたり、指示したりします。また工場にでかけてチェックし、評価も行います。」
「開発の拠点の中央研究所は茨城県つくばみらい市にあるのですが、製造は中国で行うので1年の1/3は中国で過ごしています。帰国したときは、次の商品の企画会議などをしています。」

― 就活時にピジョンでは育児や介護など人の生活に貢献できるものを作ることができると聞いたとのことですが、実際はどうでしたか?

叶谷氏:
「企画からあがってきたものに対しては、開発がほぼほぼ自由に想像して作ることができます。特に私の場合は異動の希望が叶い、ベビーの大型部署に行くことができ、やりたい仕事に携われています。ピジョンでは、年に一度、全社員が現在の仕事の満足度や異動希望などを申告できる仕組みがあるので、希望を伝えれば考慮してもらえます。
もちろん、自分の今の仕事をしっかりとこなし、評価されることがやりたい仕事に近づく近道だと思います。」

― 今後チャレンジしてみたい別の仕事はありますか?

叶谷氏:
「退職するまでずっと技術者として今の部署でベビーカーなどの大型商品の開発をやりたいです。」

― 退職まで技術者でい続けることはできるのですか?

叶谷氏:
「はい。組織のマネジメントを行うマネジメントコースと、技術者のままでモノづくりをするエキスパートコースの二つがあります。一定の年齢になると、どちらのコースがいいか自分で選択をすることになります。」

5.チーム最年少で主力商品の主担当に

― 叶谷さんが開発に携わったRunfeeシリーズがピジョンの主力ベビーカーですが、どのような役割を果たしたのですか?

叶谷氏:
「主担当として開発に携わりました。」

― 年次的にも比較的若かった方だと思うのですが、主担当をされたのですか?

叶谷氏:
「はい、今でも開発では最年少です。ただ副担当にはベテランで経験の豊富な人が配置されていたので、チームとしては強固な体制で心強かったです。」

6.大ヒット商品ができるまで

― Runfee立ち上げ当時の話を聞かせてください。

pro_pigeon_kanouya_01叶谷氏:
「当時、マーケットに変化が見え始めていた時期でした。それはオート四輪切り替えという機能が売れ筋価格帯にも登場したということでした。この機能は進行方向の車輪がフリーになり曲がるときのストレスが少ないというもので、それまで高価格帯のベビーカーに搭載されている機能でした。それが中間価格帯の商品にも搭載されるようになってきたのです。2013年12月までピジョンにはRunfeeの前身となるベビーカーもあったので、このトレンドをどう見極めるかを企画担当と話し合いました。その結果、オート四輪にマーケットが大きく舵を切っていくだろうと判断し、ピジョンのベビーカーにもオート四輪切り替え機能を搭載するという大幅な方向転換を行いました。」

― オート四輪切り替えを導入するのは技術的に難しいことだったのですか?

叶谷氏:
「すでに高価格帯では存在する商品でしたし、機構的には難しいものではないのですが、ピジョンとしてオート四輪は初めての取り組みでしたし、コストを売れ筋の価格帯にまで抑えるのが大変でした。」

― コストはどのようにして削っていくのですか?

叶谷氏:
「いらないものを極限まで削っていく作業がありました。このことは軽量化にもつながりました。また委託会社の持っていた技術をうまく使いながらコストをカットしていきました。」

7.全社挙げての応援体制へ

― 発売後、大ヒットとなりましたが、開発時から手ごたえはあったのでしょうか?

叶谷氏:
「開発中は目の前の仕事に必死で、手ごたえを感じるどころではありませんでした。ただ作っていくうちに周囲から『これ売れるよ』と言われるようになり、会社の雰囲気も徐々に盛り上がっていきました。そしてタレントを使ったTVコマーシャルを放映するぞ、記者発表会をするぞ、社員向けの勉強会をするぞ、全社員で店頭販売をするぞと、ピジョン社内でもかなり力が入って行くようになり、自分でも大きな仕事をしているんだと実感がわいてきました。」

― 開発者としては嬉しかったのではないですか?

叶谷氏:
「開発のために長期で中国に滞在しており、帰国したら盛り上がっていたという状況でした。もちろん嬉しかったのですが、同時に納期を遅れらせることはできないというプレッシャーも強烈にありました。開発は設計をするだけでなく、商品が最終試験に合格したら量産し、在庫を積み上げ、工場から出荷して、いつ店頭に並ぶかというところまで考慮しないといけません。」

8.売れたときには、すでに次の商品開発を

― 実際にRunfeeが発売された後の反応はいかがでしたか?

叶谷氏:
「発売と同時に売れました。それまでピジョンのベビーカーにおけるマーケットシェアはわずか1-2%だったのですが、それが10数%までに跳ね上がりました。ただ実際に商品が店頭に並び、大ヒットだという結果が出ている頃には次の商品の開発に取り組んでいました。開発の手を離れてから大ヒット商品になったと言われても嬉しさに浸っている暇はないという感じでしたね。」

― Runfee発売に当たっては、ピジョンが全社的にヒットを目指して力を入れたという話でしたが、開発前から「今回の商品はヒットを狙っていくので気合を入れていくぞ」というようなことはあるのですか?

叶谷氏:
「大型商品であるベビーカーは毎回ホームランを打てと言われているので、毎回狙っています(笑)。

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 大ヒット商品となったPigeon Runfee シリーズ

9.真面目で風通しのいい社風

― ピジョンの社風について聞かせてください。

叶谷氏:
「風通しがとてもいい会社です。中央研究所はフリーアドレス制といって、自分の席が決まっていません。その日に仕事をする人の近くの席に座るなど、オフィスはアイデアを出しやすい自由な環境です。壁の仕切りがない吹き抜け状態になっており、上司や役職者にも気軽に話にいける環境になっています。東京の本社も役員と同じフロアで社員が働いており、風通しはいいと思います。また社員の特長としては、真面目で人が良い社員が多いです。」

― ピジョンの新卒入社社員の研修はどのようになっているのですか?

叶谷氏:
「最初の一か月は新入社員だけの集合研修です。社会人としてのマナーやPCスキル、事業説明を聞いたり、1週間の営業体験など様々な研修を受けます。5月になり、部署に配属されると、先輩社員がOJTリーダーとなり、仕事を基礎から習います。特に私の担当しているベビーカーは大学で習うような内容ではないので、ほとんどの知識は入社後に先輩から習って身に付けました。」

― ピジョンでは配属はどのように決まるのですか?

叶谷氏:
「開発か開発以外は選考のときに希望を伝えます。その後の配属については、社員の希望と人事戦略をかけ合わせながら決まっていきます。ただ新入社員の時に希望の配属が叶わなくても、後から希望を叶えることもできます。自己申告制度というものがあり、社員一人ひとりが自分の今後の目標や部署に対する満足度、キャリアビジョンなどを全社員が年に1度、必ず申告することになっています。これらを経営陣は必ず見ているので、人事にも反映されやすくなっています。」

― どのような人がピジョンに向いていると思いますか?

叶谷氏:
「明るく仕事ができる人が向いていると思います。ピジョンは若くても積極的にチャンスをくれる会社で、若い頃から即戦力として登用してくれます。私が初めて主担当になったのも入社2年目の時でした。そういう中で、よしやるぞ!と明るく前向きに仕事に取り組むことが出来る人が向いていると思います。」

10.男性も一か月の育休制度

― 学生時代に取り組んだ方がいいことはありますか?

叶谷氏:
「勉強については入社後に実践的なことを学ぶことはできますので、学生の間は学生のうちにしかできないこと、たとえば海外にいくなどして視野を広げるようなことを行った方がいいのではないかと思います。そういう経験は将来的には仕事にも役立ちますから。」

― ピジョンでは女性にも活躍の場はありますか?

叶谷氏:
「中央研究所では半数近くが女性だと思います。特に赤ちゃんの発育や赤ちゃんの動作の研究などをする基礎研究の部署ではほとんどが女性です。また産休の取得率は100%ですし、産後復職する場合は元の部署に戻ることが約束されています。そういう意味ではとても働きやすいのではないでしょうか。女性だけでなく男性も『ひとつきいっしょコース』というものがあり、お子さんが生まれた社員全員が対象になり一か月の育休を取るようになっています。これは社長が必ず取得するように積極的に推奨しているので、かなり徹底されています。自分の育児経験で得たことを、復帰後の仕事にも活かし、商談にも説得力が増したり、改めてやりがいを感じたりと、仕事にも厚みが出ると思います。」

― 最後に就活中の学生に何かメッセージはありますか?

叶谷氏:
「就活は最後に会社を決めるまでは、大変なことも多いと思いますが、自分が目指したいところ、目指すべきところを見据えて、一社二社落ちても落ち込まずに、自分の希望を叶えらえるように頑張ってください。

― ありがとうございました。(了)

 

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