プロフェッショナルインタビュー カルビー株式会社 プロジェクト秘話

みんなが喜ぶお菓子を作る!【カルビー株式会社/中光 浩太氏】

-

pro_calbee_nakamitsu_top

カルビー株式会社 生産本部 技術部 東日本技術課 中光 浩太 氏

2013年入社 東京理科大学大学院 機械工学科研究科 卒業

1949年の創業以来、「かっぱえびせん」「ポテトチップス」「じゃがりこ」「じゃがビー」「フルグラ」と時代に合ったヒット商品を出し続けてきた日本を代表するスナック菓子メーカーのカルビー株式会社。そうしたヒットの裏には多くの研究者やエンジニアの努力が隠されている。同社で活躍する二人の理系出身者にスポットを当て、理系学生の将来の活躍の場としてのカルビーに注目をしていきたい。

1.本当にやりたいことは何か?

― 学生時代の取り組みを聞かせてください。

中光氏:
「大学では機械工学を専攻し、大学院に進学しました。専門はベアリングの研究で、超高速で回るドリルの開発に取り組んでいました」

― どのような就職活動をしたのですか?

中光氏:
pro_calbee_nakamitsu_03「自動車などの機械が好きでしたし、モノ作りが好きでプラモデルなども作っていたので、本格的に就職活動を始めるまでは、何も考えずに機械関係や自動車産業を受けると漠然と考えていました。ただ、いざ就職活動が始まると、中途半端な気持ちで取り組んでも、どこにも受からないと思い、“本当にやりたいことは何か”を真剣に考えるようになりました」

― どういうことを考えたのでしょうか?

中光氏:
「私はコンビニエンスストアでアルバイトをしていたのですが、そこでお菓子について考えるきっかけを得ることができました。もともとお菓子は好きだったのですが、お菓子は多くの人が手に取るものだな、と思うようになったのです。車はある程度お金のある大人でないと買えませんし、買うにしても高価なものですから、必ずしも好きなものが買えるとは限りません。しかしお菓子は子どもも買いますし、老若男女を問わず好きなものを買うことができていいなと思うようになったのです。そう考えるようになってからはお菓子メーカーに行きたいと強く思うようになりました。実際の就活では飲料や冷凍食品メーカーも受けましたが、気持ちとしてはお菓子の一択でした」

2.希望して工場のラインへ配属

― カルビー入社後はどのような配属になったのですか?

中光氏:
「新宇都宮工場に配属になり、じゃがビーのオペレーターになりました。三直交代のシフトで、2年半じゃがビーを作り続けていました」

― カルビーの新入社員が入社後工場に配属になることは多いのですか?

中光氏:
「当時は新入社員研修として工場での研修があり、数か月は現場(工場)に入りました。その後、本配属で工場に行く人は同期27人中5~6人でした。私は将来、技術部で活躍したいと思っていたので、生産ラインを作るためには、ラインに携わる方の気持ちがわからなければいい生産ラインが作れないと思い、希望する配属先を伝える際に工場を選択しました」

― オペレーターの具体的な仕事を教えてください。

中光氏:
「基本的にはルーティーンワークです。自分が担当していたのは生地をフライする工程だったので、生地をフライヤーに入れて、フライしたものをロボットでコンベアに移動させて、次の工程に送り出すというものです。基本的にはオートメーション化されているものをサポートしたり、ちょっと設定を変えたりするオペレーションの仕事でした」

― オペレーターを体験してみていかがでしたか?

中光氏:
「もともと自分で望んでいった現場ではありましたが、実際にやってみると単純作業が続き、体力的に厳しいなと思った時期もありました」

3.社内プレゼンで希望部署に配属

― その後どういう経緯で技術部に転属になったのですか?

中光氏:
「カルビーには『キャリアチャレンジ制度』(http://www.calbee.co.jp/recruit/grow/jinji.html)という人事制度があります。その制度を利用して技術部に移りました」

― 「キャリアチャレンジ制度」についてもう少し詳しく教えてください。

中光氏:
pro_calbee_nakamitsu_02「『キャリアチャレンジ制度』とはカルビー独自の人事制度で、入社後様々な段階において本部長(執行役員)に対してプレゼンをし、自分が達成してきた成果や今後やりたいことをアピールして挑戦したいキャリアに向かって自ら道を切り拓いていくというものです。自分の場合は『新卒チャレンジ』のプレゼンのチャンスを活かし、異動を実現させました」

― 実際にどのようなプレゼンテーションをしたのですか?

中光さん
「通常そういったプレゼンをするときは自分のこれまでの仕事の成果を語ることが多いのですが、私がそれまで行っていた業務は単純作業も多かったため、語れる成果があまりありませんでした。そこで色々と考えた結果、自分が現場で何を学んだのかを話そうと決めました。例えば、実際に現場で働いてみるとほんの些細なことが大きな障害になります。すぐそこに行きたいのにまっすぐ行けないので大回りしなければいけないとか、持てない程重いものでなくても毎日だとかなり辛い作業になるなど、色々あります。現場では、より効率的に業務を行うために時短を図りたいのですが、そうした問題が障害になってうまくいかないこともあります。また、最初からきちんと考えて設計されていないと修正が難しい問題もあります。そうした問題は実際に現場で働いてみないとわからないので、自分の働いた経験が生きるはずだ、という話をしました。安全安心を標榜してもなかなか適わない状況が生まれてしまいます。最終的に安全ではないラインからは安心な製品は作れません。最終的にお客様に安全安心な商品をお届けできるよう、自分の知見を生かしたいという話をしました」

4.多岐に渡る業務内容

― それで晴れて技術部に異動したのですね。技術部では何をしているのですか?

中光氏:
「カルビー入社4年目の4月から技術部に異動したのですが、異動してからはじゃがビーの新ラインプロジェクトに取り組んでいました。下妻工場の別の商品を作っていたラインをじゃがビーのラインに変更するというプロジェクトです」

― 具体的にはどのようなことをするプロジェクトですか?

中光氏:
「今回は既存の工場に新しいラインを作るというものですから、まず元のラインを取り除かなければいけません。取り除いて場所を整備し新しい機械をいれます。その作業に関わる業者を選定するために、見積もりを取るなどの事務作業も行います。作業が終わると、機械を試運転させます。そうすると、想定外の不具合が発生することもありますので、その不具合の原因を一つひとつ解決していきます。そして不具合をすべて直したところで、工場に新しいラインを引き渡します」

― 実際に仕事をしてみて就活時にイメージしていたものとの違いはありましたか?

中光氏:
「大筋においてはイメージ通りでしたが、仕事の範囲が思っていたよりもずっと広かったです。たとえばメーカーに何度も電話して仕様を詰めて、値引き交渉するといったように営業のような仕事もしています。単にラインを作るだけではありませんでした」

5.バイトで身に着けたコミュニケーション力

― エンジニアでもコミュニケーション力が要求されるのですね。

中光氏:
「そうですね。その点はびっくりしました。例えば工事作業者など外部の方ともたくさん話さなければいけません。人とうまくコミュニケーションをとるということはとても大事です」

― その点で苦労はありましたか?

中光氏:
「あまりありませんでした。人付き合いはかならずしも得意だというわけではありませんが、人の話をよく聞くことを大切にしていました。」

― 仕事の流れは大筋においてイメージ通りだったということですが、学生時代も似たような経験をしたことはあるのですか?

中光氏:
「研究室にいた頃は実験装置を設計し作っていたのですが、材料を発注して、加工をしてくださる担当の方に加工を依頼し、組み立ててもらって、出来上がったものに不具合が生じるのでまた手直しをして・・・という作業をしていました。そういう意味では根本的には同じようなことをしていたのかも知れません」

― 材料を発注する際はやはり仕様を伝えていたりしていたのですか?

中光氏:
「はい。学校の中に工場があり、その中の方たちにお願いをしたり相談したりするのですが、いつも人気で学生が殺到して混んでいました。でもその方々と仲良くなると先に作業いただけるようになり、最終的には私のお願いを優先的に受けてくださいようになりました(笑)その時に人とうまくコミュニケーションをとれると物事がうまく進んでいくのだということに気づいた気がします」

― やはりコミュニケーション能力が高かったのですね。

中光氏:
「コンビニでの接客を通じて少しずつ身に付いたのかも知れません。初めてコンビニでアルバイトをしたときは、本当に怖かった記憶があります。客としてコンビニに行くのと店員とでは見える景色が全然違いました。お酒に酔っている方も来店されましたし本当にできるか不安でしたが、やっていくうちに意外と馴れてくるものでした。就職活動でも面接があると思いますが、面接も人と話すことなので、普段から友だち以外の人と色々と話す機会を積極的に設けてコミュニケーション力を磨くといいと思います」

6.時には必要タフな交渉力

― 一人で黙々と作業をすることはありますか?

中光氏:
「初期の設計段階ではオフィスで図面を書くなどデスクワークもありますが、工事が始まってからはまったくと言ってよいほど、一人で黙々と作業することはないです。ずっと現場に出ていて施工先と話したり、メーカーと話したりしています。時々オフィスで図面を書いたり発注作業をしたりすることもありますが、基本的には座っている時間はほとんどありません」

― どういう人がカルビーの技術部のエンジニアとして向いていると思いますか?

中光氏:
pro_calbee_nakamitsu_01「エンジニアですから機械に強いというのは前提ですが、加えて色々な方とコミュニケーションをとる必要があるので、人と話すことが得意な人は向いていると思います。ある工場長から『君は誰とでも話を合わせられるから、この仕事向いているよね』と言われたことがありますが、人と話を合わせられるということも大切なのかも知れません。ただ人に合わせればいいかというと、それだけでは駄目です。皆と仲良くやろうということばかり考えすぎてしまうと、見積もり交渉などいざという時にきちんとこちらの意見や主張を取引先に伝えられなくなってしまいます。先方が納期を遅れそうなときにも、嫌われたくないからと言わなければいけないことを言えずにいると仕事に支障が出てきてしまいます。自分も初めは強く言う事ができませんでした。でも仕事ですから時には強く言うことも必要です」

7.現場のことを考えられるエンジニア

― 技術部に移ってから最初のプロジェクトがもうすぐ終わろうとしていますが、いかがでしたか?

中光氏:
「とにかくすべてのことが初めてのことだったので余裕がありませんでした。時間もなかったですし、今振り返ってみるとただ作るぞという意気込みだけで、せっかく自分がラインに入って経験してきたことを生かし切れていませんでした。やはり現場では本当に些細なことで大きく変わってきてしまうので、もう一度同じようなプロジェクトの機会があったら、もう少し広い視野を持って現場での経験を生かしたいなと思います」
「プロジェクトの最後の方には業者に対して言わなければいけないことはしっかりと言えるようになりましたが、最初は甘いところがありました。人の和を大切にしながらもきちんと言うべきことは言うのは大切ですね」

― 今度どのようなキャリアを形成していきたいですか?

中光氏:
「第一の目標は一人前のエンジニアになることなので、まずはここでの仕事をしっかりとできるようになりたいと思います。そして当初の思いの通り、現場のことをしっかりと考えられるエンジニアになりたいと思います。そのためには余裕を持つことが必要です。余裕が生まれてはじめて現場のことにまで気が回りますから。将来的には、海外の仕事もやってみたいと思います」

― カルビーでは海外で働くチャンスは多いのですか?

中光氏:
「はい、多いです。先輩のエンジニアが最近ではイギリスやインドネシアなど、カルビーが新しく進出した国へ工場建設のために行っているという話はよく聞きますし、これからもそうした機会は増えていくと思います」

8.より広く愛される商品を

― なぜ海外の仕事をしてみたいのですか?

中光氏:
「海外の仕事をすればより多くの人に楽しんでもらえるからです。自分が携わった商品を誰かが食べてくれたらうれしいですし、励みになります。国内でも、海外でも、子どもからお年寄りまで多くの人が食べてくれるお菓子を作れたらいいなと思います」

9.あなたのモチベーションは?

― 就職活動でカルビーを受けた時からブレがありませんね。就活をお菓子に絞ったのは大胆な選択でしたが、キャリアに一本筋が通っているのは学生時代にお菓子作りに携わりたいと気付くことができたからなのではないかと思います。どうして気づくことができたのだと思いますか?

中光氏:
pro_calbee_nakamitsu_04「機械系の大学だったので、大体皆受けるところは一緒でした。ただどれだけ車が好きでも、車一台を全部見ている人はほとんどいません。大抵どこか一部の部品です。それが自分の働くモチベーションになるのか、という問いかけをしました。カルビーのお菓子は誰もが知っていて、誰もが興味を持てるものです。自分の場合はあまり皆が興味を持たないものにはモチベーションが湧かなかったのです」
「ある時一人で旅行をしていたら隣のおばちゃんが話しかけて来て、帰り際にじゃがりこをくれました。『僕ここで働いているんですよ』とお伝えしたら『そうなの、おいしいわよね』と言ってくれたのです。すごく嬉しかったですし、モチベーションになりますよね。モチベーションが感じられないと働くのが辛くなってしまうので、何が好きなのかに加えて、何が自分のモチベーションになるのかを考えるのも必要だと思います」

― 最後に就職活動中の学生に何かメッセージはありませんか?

中光氏:
「就職活動ではたくさんの学生がライバルになるので、面接で『なんでこの会社なの?』と質問されたときに、きちんと差別化して話ができると興味をもっていただけると思います。良く考えてその部分を見つけるのが大切だと思います。頑張ってください!」

― どうもありがとうございました。(了)

 

企業・職場紹介

[member]

-プロフェッショナルインタビュー, カルビー株式会社, プロジェクト秘話
-

PICKUP!